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One Minute Can Mean a Lifetime

出生に関する2つの話:

次の話はいずれも、メディアで広く取り上げられた実話です。2つとも、子供の出生直後の救命救急に関わるものでした・・・

最初のケースでは、担当医は分娩室での緊急事態を認識して管理できるよう、積極的なトレーニングを受けていました。存在する危険因子の緊急性を診断した時点で、この医師は綿密な計画と演習を重ねた対応を行い、子供への悪影響を回避しました。家族にとって幸いにも、出産は大成功に終わりました。

この近隣施設でも同様の救命救急が行われましたが、ここでは異なる事態が展開されました。緊急介入に至った状況の診断と対応は子供にとって致命的であったことが判明し、その結果、母親に1,020万ドルが支払われることとなったのです。

世界中で毎年、推定814,000例の新生児死亡が正期産児の分娩時低酸素症(つまり、「出生時仮死」)と関連しています。1 生存できた新生児の多くには神経学的障害が残ります。2

赤ちゃんは生まれると、子宮外に出た後の最初の60秒間「Golden Minute(黄金の1分間)」に呼吸を始め、ほとんどの赤ちゃんは自発的に呼吸を開始します。しかし、全世界で1,000万人の赤ちゃんが補助を必要とします。3 自発呼吸ができない新生児の約10%は、皮膚乾燥、加温、気道確保や刺激に反応して呼吸を始めます。そして、呼吸をしていない赤ちゃんの1%は、胸骨圧迫や投薬などの高度な蘇生処置を必要とします。4

家族にとって、1%でもすべてを意味します。その1%が子供の生存を妨げ、生存できたとしても脳に傷害が残るリスクが高まります。母親は出来る限り最高のケアを受けられると信じているものであり、医療提供者に対してはその1%のリスクに対して十分な備えができているものと期待します。

1分間: 何かをするには短すぎるでしょうか?

「Golden Minute(黄金の1分間)」とは、乳児が出生してから最初の60秒間を指します。この限られた秒数で、乳児は自発的に呼吸を開始するものであり、そうでない場合には介入を始めなければなりません。

 

米国では、毎年約400万人の赤ちゃんが誕生しています6。このうち40万人の赤ちゃんは、子宮外での生活に移行するために呼吸のサポートや陽圧換気を必要とします。また、12,000人もの新生児が胸骨圧迫や心臓の薬物を用いるなど、高度な蘇生処置を必要とします。7

 

いずれの場合でも、正確かつタイムリーな手順で乳児の治療を行う必要があります。

新生児の死亡の半数近くが生後24時間以内に発生します。8

周産期仮死と超未熟児は、複雑な蘇生処置を要する可能性のある妊娠合併症の2つですが、分娩前に仮死状態が予測できる新生児は60%に留まります。9 残りの新生児は「Golden Minute(黄金の1分間)」を迎えるまで特定されません。これが、備えることが極めて重要である理由です。

なぜ新生児蘇生プログラム® (NRP®) は重要なのでしょうか

出生時に蘇生が必要となることが多いため、エビデンスに基づくケアのガイドラインを策定し、効果的な新生児蘇生の訓練を実施することが極めて重要となります。

医療提供者が新生児蘇生の進展に関する最新の知識を確実に得られるよう、米国心臓協会(AHA)と米国小児科学会(AAP)は、米国向けの新生児治療ガイドラインを共同で策定しました。米国小児科学会により構築された新生児蘇生プログラム®(NRP®)は、新生児に対する救命救急の心臓血管ケアと蘇生に関するAAP/AHAガイドラインを教育カリキュラムに転換させたものです。

AAPが構築したカリキュラムには次の点が含まれます:eSim、スキル練習、オンライン試験、シミュレーション/ディブリーフィングブレンド型の学習アプローチは、医療従事者が効果的なチームベースのケアを促進する助けとなります。

新生児の蘇生を成功させるためには、予測、適切な準備、正確な評価、速やかなサポートの開始が極めて重要です。10

新生児蘇生が不成功となる際の最もよくある理由には、以下が含まれます: 11

  • 生後すぐの蘇生の必要性を認識できていない
  • 高い危険因子を伴う出産の後、適格で経験豊富な医療従事者が近くにいない
  • チームワークとコミュニケーションの破綻
  • 不適切な新生児蘇生術

NRPのカリキュラムでは、ケアチームの自信を高め、各メンバーの蘇生と安定化の技術を向上させることができます。さらに、カリキュラムは、新生児が生まれた後の最初の最も重要な60秒間に必要不可欠となるコミュニケーションと意思決定プロセスに特化しています。

誕生の奇跡を再現

シミュレーションは、NRPの学習において重要な役割を果たします。シミュレーションにより、スキルと知識の統合が強化されます。しかし、それ以上に、人的要素ならびに患者の安全に集中することがシナリオの中に取り入れられてます。

チームコミュニケーション、親とのやりとり、そして新生児が苦しんでいる状況では避けられない不安感といったすべてをシミュレーションで再現でき、重症の新生児に直面した際のストレスレベルが軽減されることになります。 

シミュレーショントレーニングは、医療過誤の防止にもつながります。シミュレーショントレーニングでは、継続的で体系的な教育訓練を行い、パフォーマンスの評価やチームとしての実践の精度を高めることにより防止可能な医療過誤に対応します。13

ある研究では、実際の臨床環境で行われたin situシミュレーショントレーニングによって、新生児蘇生における有害事象の発生数が著しく減少したことが明らかになりました。14 また、別の研究では、シミュレーショントレーニングを受講した看護師は、エピネフリンの不正確な投与量を指摘する可能性が40%近く高くなることが確認されました。15

シミュレーショントレーニングの後では、医療従事者は臨床での意思決定を改善し、スキルを磨き、より自信を持てる可能性があります。そして、これらのすべてが新生児蘇生においては極めて重要です。

幸せな始まりのために

スキルと自信を携えた結束力のあるケアチームは、赤ちゃんの人生における最初の1分間に大きな違いを生み出すことができます。新生児蘇生トレーニングによって、医療従事者は危機的な状況にある新生児を認識して60秒以内に治療を開始するためのよりよい体制を整えることができます。

1分間で生存と一生が決まる可能性があります。 

救命への貢献という私達のミッションのもと、レールダルは医療従事者がその1分間の1秒1秒に対処できるように備えるトレーニングを提供するための支援にコミットしています。直接的または間接的にかかわらず、あなたが関わるすべての出産が幸せな始まりとなるよう、私達は手助けをしたいと考えています。

References

  1. Imdad, A., Yakoob, M.Y., Siddiqui, S., & Bhutta, Z.A. (2011). Screening and triage of intrauterine growth restriction (IUGR) in general population and high risk pregnancies: A systematic review with a focus on reduction of IUGR related stillbirths. BMC Public Health, 11(3). DOI: https://doi.org/10.1186/1471-2458-11-S3-S1
  2. My Child. (2017). Hypoxic-ischemic encephalopathy, or HIE, also known as intrapartum asphyxia. Retrieved from: http://www.cerebralpalsy.org/about-cerebral-palsy/cause/hypoxic-ischemic-encephalopathy
  3. Heerden, V. (2012). An introduction to helping babies breathe: The golden minute is here for south African newborn babies. Professional Nursing Today, 16(3).
  4. Ibid
  5. American Heart Association. (2005). Neonatal resuscitation guidelines. American Heart Association, 112(24). DOI: https://doi.org/10.1161/CIRCULATIONAHA.105.166574 
  6. Ibid 
  7. Ibid
  8. Bissinger, R.L. (2015). Neonatal resuscitation. Medscape. Retrieved from: https://emedicine.medscape.com/article/977002-overview
  9. Ibid
  10. American Heart Association. (2005). See reference #4.
  11. Birth Injury Guide. (2017). Infant Resuscitation Errors. Birth Injury Guide. Retrieved from: http://www.birthinjuryguide.org/birth-injury/causes/infant-resuscitation-errors/
  12. Stokowski, L.A. (2006). Simulation training in neonatal resuscitation: Practice makes perfect. Medscape. Retrieved from: https://www.medscape.com/viewarticle/541371
  13. Ibid
  14. Rubio-Gurung, S., Putet, G., Touzet, S., Gauthier-Moulinier, H., Jordan, I., Beissel, A., et al. (2014). In situ simulation training for neonatal resuscitation: An RCT. Pediatrics, 134(3), 790-797. DOI: 10.1542/peds.2013-3988
  15. Sawyer, T., Laubach, V., Yamamura, K., Hudak, J., Pocrnich, A. (2013). Interprofessional teamwork training in neonatal resuscitation using TeamSTEPPS and event-based approach simulation. Association of American Medical Colleges. Retrieved from: https://www.mededportal.org/publication/9583/#274981
  16. Halamek, L.P., Kaeji, D.M., Gaba, D.M., Sowb, Y.A., Smith, B.C., Smith, B.E., et al. (2000). Time for a new paradigm in pediatric medical education: Teaching neonatal resuscitation in a simulated delivery room environment. Pediatrics, 106(45).